ページの本文へ

番組&コンテンツえるSDGs

長年の戦争証言取材が実り、名誉ある賞を受賞!「令和6年度 芸術選奨 文部科学大臣 新人賞(放送部門)」

長年の戦争証言取材が実り、名誉ある賞を受賞!「令和6年度 芸術選奨 文部科学大臣 新人賞(放送部門)」の画像
日中戦争、真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナルを戦い抜いた零戦搭乗員と。2013年撮影

2025年3月3日(月)に、令和6年度(第75回)芸術選奨の受賞者が文化庁から発表され、放送部門において、社会文化部の大島隆之シニア・プロデューサーが新人賞を受賞しました。受賞の決め手となったのは、同氏がディレクターとして制作に参加した「NHKスペシャル “一億特攻”への道 ~隊員4000人 生と死の記録~」(初回放送は2024年8月)です。この番組では15年以上に及ぶ取材によって得た特攻隊員約4000人の本籍地や経歴を徹底解析しています。取材の過程で、隊員がどのように選別されたのか、これまで謎だった実態に迫る極秘資料を入手することにも成功しました。

そこから浮かび上がって来たのは、当時の日本人が特攻を「希望」とみなし、国のすみずみにまでその熱狂が伝播していく様子でした。

大島隆之シニア・プロデューサーは今回の受賞に際して、こんなコメントを残しています。

「今年で入社24年目となりますが、そのうちのかなりの時間を、太平洋戦争を経験した人びとに取材・インタビューし、『戦禍の記憶を伝える』ということに費やしています。これまで『零戦』『戦艦大和』『ヒトラーの演説』『少年兵』『真珠湾攻撃隊』などを題材に番組を制作してきましたが、ここ数年は『特攻』をテーマに、戦死した4000人の隊員ひとりひとりについての情報を整理して全貌を可視化すると共に、遺族のもとを一軒ずつ回ることに力を注いできました。特攻の記憶は、『国家』のために個人の尊厳を極限まで犠牲にした太平洋戦争の象徴として長く語り継がれるでしょうし、その一方で、美化され都合よく利用される危険性も常に伴うと考えるからです。

遺族の元を巡っていると、特攻を語るうえで大切な話、貴重な遺品など、新たな発見がまだまだたくさんあります。全戦死者4000人の故郷を訪ねるには少なくともあと10年はかかりそうなので、日常業務の傍らライフワークとして気長に取り組んで行こうと思っています。そして、いつか訪れるかもしれない危機に備えていきたいと考えています。

自分がもらうことなど想像もしていなかった名誉な賞ですが、40代なかばでいただく新人賞、『まだまだこれから』という思いを新たにすると共に、こうした受賞が、時間をかけて大きなテーマに挑戦したいと思っている制作者たちの励みになればと願っています」

2024年放送のNHKスペシャルより 光の柱は戦死した特攻隊員の故郷を表している

更新

大島 隆之の顔写真

大島 隆之

第1制作センター社会文化部

略歴
昭和54年東京都生まれ。大学で歴史学を専攻(考古学)。平成14年NHKエンタープライズ入社。主に災害や戦争をテーマとする証言ドキュメンタリーを制作。同23年NHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」(第49回ギャラクシー奨励賞)、同24年「巨大戦艦 大和〜乗組員が見つめた生と死〜」(第29回ATP賞ドキュメンタリー部門優秀賞)、同25年「零戦 搭乗員が見つめた太平洋戦争」(第30回ATP賞グランプリ・ドキュメンタリー部門最優秀賞)など。
主な作品
NHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」、「特攻なぜ拡大したのか」、証言記録・東日本大震災「第1回 陸前高田」「第3回 南相馬」、BS特集「巨大戦艦 大和」「零戦」「独裁者ヒトラー 演説の魔力」「少年たちの連合艦隊」「真珠湾80年 生きて 愛して、そして」「特攻4000人 生と死 そして記憶」ほか

番組&コンテンツで伝えるSDGs

© NEP/まずりん