アイデア対決!小学生ロボコン 2024年度実施報告

小学生と最高のものづくり体験!ニョキニョキ伸びる子どもたちに感動!
「アイデア対決! 小学生ロボコン」は、「高専ロボコン」や「NHK学生ロボコン」、そして「ABUロボコン」に続く第4のロボットコンテスト(以下、ロボコン)です。ロボット好きの小学生のための大会で、2018年度のプレ大会を経て、2019年度から開催されています。コロナ禍には、zoomを活用したオンラインイベントとして開催されていましたが、2024年度の全国大会は東京・池袋のサンシャインシティ・噴水広場にて開催されました。
池袋 サンシャインシティ・噴水広場は吹き抜けの会場で、ご家族や学校の友達だけでなく、サンシャインシティに遊びに来ているひとたちも足を止めて小学生ロボコニストを応援してくれました。
大会の形式は、年によって若干異なりますが、2024年度の全国大会は、各地の予選会から選抜された18人の選手が3人1組のチームを組んでミッションにチャレンジするというものでした。毎年全国大会の切符を手にしてやってくる常連の小学生もいれば、初めて参加してそのまま全国大会まで上り詰めるニュー・スターもおり、顔ぶれは様々です。また、2024年度のテーマは「ベスト・フレンド・ロボット」でした。
このテーマ、2012年度の高専ロボコンの競技ルールだった「ベスト・ペット」をオマージュしたもので、「相棒のロボット」を持ち寄って、フィールド上の文房具を集めて箱に入れ、高さのあるテーブルに片付けることがミッションです。片付けた文房具の数だけでなく、ロボットのアイデアや装飾、チームワーク(役割分担などの協力や作戦)も加点の対象になります。







今年も、テーマやミッションを考えた大人の想像を上回る、個性豊かなロボット・チームが集まりました。アイデア満載のロボットたちの活躍はぜひYouTubeの大会アーカイブをご覧ください!
https://www.youtube.com/live/lbutNVf-_GA
さて、そもそも「小学生ロボコン」の目指すものは何か、大きく2つの柱があります。
①広くあまねく小学生にものづくりの楽しさを知ってもらうこと
②最高のものづくり体験を提供すること
この2つを軸に小学生ロボコンは試行錯誤を続けています。
まずは体験の場をつくりたい
柱①のなかに、「広くあまねく」「ものづくりの楽しさを知ってもらう」という2つのテーマが含まれています。できるだけ多くの小学生に参加してもらうため、まずは気軽に体験できる場を設けることが必要だと考えています。
従来は、2時間の作業時間でゼロからロボットを工作できるようなワークショップを実施していましたが、初心者の子どももトライしやすくするため、2024年度からは新しいワークショップを開発しました。名付けて、「ぼくの考えたさいきょうのロボットワークショップ」です。(普段は「操縦体験ワークショップ」と呼んでいます)
最近のゲームで増えているキャラクタークリエイト(自分で顔のパーツや衣装を選んでそれぞれが理想のプレイヤーキャラクターをつくる)から思いついたアイディアです。




夏休みには「青少年のための科学の祭典(会場:科学技術館、主催:公益財団法人 日本科学技術振興財団 )」や「京都こども科学博(会場:京都市勧業館みやこめっせ、主催:公益財団法人稲盛財団 )」などの子ども向け科学イベントに出展し、体験してもらうことができました。
ロボコンの醍醐味は、「ミッションを達成するための機構のアイデア」を考え、組み立てたものが自分の操縦で動かせる、という点にあります。最初は科学分野を苦手としていても、ふだんはサッカーやK-POPに夢中でも、まだ体験したことがないだけで触ってみたらすごく楽しいという出会いもきっとあるはずです。できるだけ多くの子どもたちにその機会をつくることこそ、小学生ロボコンが目指すことだと考えています。
プロフェッショナルとのふれあいから生まれる「最高のものづくり体験」とは?
毎年秋に開催している「小学生ロボコン 全国大会」と、出場するロボット制作のための「事前合宿」には予選会から推薦されてきた、全国の工作自慢・ロボコン能力自慢の子どもたちが集まります。意気揚々と参加してくれる子どもたちに、心に残る特別な体験をしてもらいたい、というのがロボコン事務局の願いです。
●特別な「学びの機会」の提供
2023年度は、はやぶさプロジェクトが行ってきた「サンプルリターン」をテーマにした競技でした。そこでJAXA相模原キャンパスに見学に行き、はやぶさや、はやぶさⅡのプロジェクトに関わった先生の特別講義を聞くことができました。また、2024年度はペットロボットを制作している企業に見学に行き、どんなロボットに人は愛着を感じるのか?などを考え、実際にロボットに動きをプログラミングで与える特別ワークショップを実施していただきました。こうした学びの機会をつくるというのも、「ものづくり体験」のひとつと考えています。


●普段出会えないプロフェッショナルな人たち
全国大会の場での人との関わりも「ロボコン」ならではの体験です。応援いただいているものづくり企業の大人たちや、審査員のロボット製作者・研究者の大人たちに評価、コメントをもらうことができます。以前、毎年MCでご出演いただいている高橋あやなさんに「小学生ロボコンの面白さってなんだと思います?」と雑談で聞いたところ、「みんなと違うことをやって褒められるのが小学生ロボコン」とおっしゃっていて、大変感動したことを覚えています。こうした、子どもたちにとって普段とは異なる成功体験の場を目指しています。
また、高専ロボコン・学生ロボコンOB・OGが技術メンターとして自分たちのロボットにアドバイスをくれることも、貴重な体験です。全国大会には小学生ロボコンOB・OGも審査員として参加し、後輩ロボコニストのチャレンジを見守ってくれます。こうした、普段はなかなか直接関わることのない、ロボット分野の先輩や大人たちとの関わりは、少なからず小学生たちに自分の将来を想像してもらうきっかけになるかと思います。実際に初年度の小学生ロボコン出場選手からは高専に進学し、ロボコン部で高専ロボコンに出場している子どもたちもあらわれています。
そして、参加した小学生たちは、全国に仲間ができることも非常に有意義なものであると考えています。全国大会で一同に会すことで、自分と同じくらいロボットを作るのが好きな同志と出会うことができます。学年や地域も飛び越えて、その後も連絡を取り合う友人ができた、と参加者からも声をいただいています。高専ロボコン出場経験者からは「自分が小学生のときにもあったら絶対に出たかった」「ものづくりは孤独で暗い作業になりがちだが、小学生のうちから仲間と出会って一緒にがんばれるのがいいところ」とコメントをもらっています。
「最高レベルのものづくり体験」は普段出会えない人たちとの出会いの場、そしておもいっきり自己表現を楽しむ場と感じてもらうことが小学生ロボコンの強みではないかと考えています。
最後に・未来への種まき
小学生たちが高専ロボコンに出場して再会するのか、あるいはまったく別の方向に進んでいくのか、大人になったときにものづくりに携わっているのか、それともものづくりの素晴らしさを伝える側になっているのか、子どもたちの未来にはいくつもの可能性が広がっています。小学生ロボコンでの体験や誰かから受けた褒め言葉が、どこかのタイミングで彼・彼女たちの背中をそっと押すものであればよいと願っています。
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