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ブラジル・ベレンCOP30報告! 正念場の気候変動対策

ブラジル・ベレンCOP30報告! 正念場の気候変動対策の画像

アマゾンの玄関口で開かれた温暖化対策の国際会議

2025年11月10日−22日、ブラジル・アマゾン川河口の街ベレンで、国連の気候変動枠組条約第30回締約国会議COP30が開かれました。ブラジル・パラ州の首都ベレンは人口150万、日本から見るとまさに地球の裏側です。私は、カタールのドーハとサンパウロ経由で向かったのですが、成田を出発してからベレン空港に辿り着くまで、実に39時間! 本当に遠かったです。飛行機を降りるとグリーンの光に包まれ、アマゾンのシンボルであるジャガーに彩られたゲートがお出迎えしてくれました。

ベレン国際空港もCOP30仕様に

ベレンは赤道直下で季節は初夏。熱帯を思わせるスコールが夕方に降りますが、思いのほか過ごしやすく、真夏でも気温は35℃を超えることがないそう。東京の夏より涼しいようです。
ブラジルは1992年に、現在COPとして定期的に会議が続いている気候変動枠組条約と生物多様性枠組条約が誕生する契機となった「リオの地球サミット」開催の地。当時12歳の少女だったセヴァン・スズキさんの伝説のスピーチでも有名です。

「あなたがた大人は、絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか知らないでしょう。今や砂漠となってしまった場所にどうやって緑の森をよみがえらせるのか知らないでしょう。だから、大人のみなさん、どうやって直すのかわからないものを、壊し続けるのはもうやめてください」

私もセヴァンさんのドキュメンタリーを制作したことがありますが、今回のCOP30は、この言葉の意味を苦い意味で噛み締めるものとなりました。

リオネジャネイロの地球サミットでスピーチするセヴァン・スズキさん(当時12歳)

今年はパリ協定から10年の節目でもあり、アマゾン地域で開かれる初めてのCOPということで世界中から注目されていました。会議に登録した交渉団やメディア、市民など6万人以上が参加、世界中から4000を超すNGOがベレンに集結しました。しかし宿泊施設が足りず、市内のビジネスホテルが一泊10万円以上になるなど高騰し、参加者を悩ませました。途上国向けに客船を停泊させて宿泊させるなどの対策で急場を凌ぎましたが、てんやわんやの準備状況だったのです。幸い私たちはベレンの郊外のサンタバルバラ市にある、日系ブラジル人が守り続けている広大なアマゾンの森にある研修施設「群馬の森」にお世話になり、朝から森でとれた美味しいフルーツをたっぷりいただくなど快適に過ごすことができました。研修施設からベレンに向かう国道316号線まで出ると、ブラジル政府が用意したCOP30のシャトルバスに乗ることができ、現地のボランティアにお世話になりながら毎日会場に向かいました。

仮設のテントが設置された会場は、空港近くの公園にあります。一般市民も参加できるグリーンゾーンには、連日大勢の人が訪れ、先住民の工芸品のマーケットも立つなど、アマゾンならではの光景も見られました。ブルーゾーンというセキュリティの厳しい会場も、ネイチャーCOPと言われるだけあって、至る所にアマゾンの生きものたちの写真が展示され、人類の議論の行方を見守っているかのようでした。

会場の至る所にアマゾンやセラードの生きものたちの巨大な写真が飾られていた

ジャパンパビリオンをはじめとする会場での活発な議論

私の今回のCOP30参加の目的は、NHKエンタープライズ主催のジャパンパビリオンのセミナー「気候危機を食い止めるために -ステークホルダーの連携による啓発活動と環境教育-」に登壇するためです。

日本が誇る最新技術の展示も行っているジャパンパビリオンでは、30を超えるセミナーを開催。私たちは、国連や民放各局と進めている「1.5℃の約束」キャンペーンや、世界的なアニメスタジオSTUDIO4℃とNEPが制作した気候変動について学べるアニメ教材「FUTURE KID TAKARA」について世界に発信しました。国連からは、グローバルコミュニケーション局で気候変動のチーフを務めているマルチナ・ドンロンさんが登壇、日本の先進的取り組みを高く評価してくださいました。このほか、慶應大学の舛方周一郎准教授がアマゾン保全における日本とブラジルの連携事例を紹介、ラドバウド大学のクリスティナ・ユミエ・アオキ・イノウエ准教授が「プラネタリー・ジャスティス」の重要性について熱く語り、NPO法人ゼリ・ジャパンの山本麻里子さんが大阪・関西万博での「ブルーオーシャン・ドーム」での海洋保全の取り組みを報告しました。セミナーは英語で行われ、森と海のつながりにもスポットが当たったパネルディスカッションも実施。海外の来場者も含め、皆さん熱心に耳を傾けてくれました。

○FUTURE KID TAKARA
https://sdgs.nhk-ep.co.jp/futurekidtakara/

○レポート記事:COP30でアニメ「FUTURE KID TAKARA」が紹介されました!
https://sdgs.nhk-ep.co.jp/futurekidtakara/20251205/

※セミナーの模様は、下記のリンクから視聴いただけます(英語のみ)
https://youtu.be/ykf6-c6y3pg?si=z1DL8OFppEjLntGG

NHKエンタープライズ主催のジャパンパビリオンでのセミナー

COPには190を超える国が参加していますが、各国パビリオンや、オーシャン、チルドレン&ユースなどのさまざまなテーマパビリオンでは、毎日膨大なセミナーが開催されています。アメリカが不参加の中で、連日活況を呈していたのが中国パビリオンです。脱炭素ビジネスのリーダーになる強い意気込みが感じられました。(人気の秘密はパンダグッズのお土産にもあったようですが!) またアグリビジネス大国のブラジル開催とあって、食料と農業にフォーカスした展示も数多く見られました。このほかにも各種のサイドイベントや記者会見、そして会場内でのパフォーマンスなどが連日繰り広げられるのが最近のCOPの特徴です。いわゆる各国代表団による本会議場での交渉だけでなく、ノンステートアクターと呼ばれる世界中の気候変動関係者が集まって最新情報や知見を交換し、新しいソリューションを生み出そうとする場になっているのです。

私が参加したのは会議の後半からでしたが、前半にはベレン市内でNGOや市民による数万人規模の気候マーチも行われました。実は、エジプトのCOP27やUAEのCOP28、アゼルバイジャンのCOP29では市内でのマーチは禁止されていたので、今回はイギリスのCOP26以来4年ぶりとなります。アマゾン地域ということで、船を使ったマーチや先住民の行進もあったそうです。

ベレンで開かれた気候マーチに参加した先住民族(写真:WWF)

COP30の1週目には、アクレディと言われる会場へのパスを持たない先住民のグループがアマゾンでの石油開発反対などを訴えるため会場内に大挙して入ってくる動きがありました。以後、国連の要請もありブラジル政府は治安部隊の配備を強化して物々しい警備体制を取りました。しかし、2週目も会場の至る所で平和的にさまざまな気候アクションが行われ、世界に発信する姿は変わりませんでした。今回は、実際には数多く来場して暗躍していると言われる化石燃料側のロビイストたちを牽制するアクションもあちこちで行われていました。

こうしたなか日本は、世界のNGOの集まりであるCAN(Climate Action Network)から、6年連続となる不名誉な「化石賞」を受賞してしまいました。受賞理由は、日本が推進している石炭火力への水素、アンモニア混焼、CCS(二酸化炭素貯留・回収)が化石燃料の促進につながり温暖化対策を遅らせていること。オーストラリアのガス田開発プロジェクトへの巨額の投資で先住民の住む土地や水、文化に悪影響を与えていること。COPでの「公正な移行」の交渉において、公平性や地域社会の声を反映する制度的枠組みを取り入れることに反対する姿勢などです。世界の温暖化対策のランキングでも、主要64か国中57位と最下位グループにいる日本。来年こそは、連続受賞をストップさせたいものです。

COP30 前代未聞の火災と会議の結果

さて、当初予定の会期も残すところあと1日という11月20日、COP会場では思いがけない事件が起きました。この日私は、午前中グテーレス事務総長の記者会見に参加していました。COP30の首脳級会合で「科学の予測によれば遅くても2030年代初めには一時的に1.5度を超えることは避けられない状況となっている。今、必要なのは政治的勇気だ」と強く訴えていたグテーレス事務総長。この日は、「化石燃料は温室効果ガス排出の80%を占めている。再生可能エネルギーへの公正な移行が行われなければ、問題の解決は不可能だ」と語り、私も「1.5℃目標」実現に向けたロードマップ=工程表を作ることの大切さを改めて実感していました。

午後1時半からは国連SDGパビリオンに登壇し、「1.5℃の約束」やアニメ「FUTURE KID TAKARA」についてより詳細に語り、アニメの上映も行っていました。ところが午後2時過ぎ、ものすごい足音がして、大勢の人が出口に走っていく姿を目撃。またデモ隊の乱入でもあったのかと気になりながらも粛々と講演を続けていたのですが、すぐに「火事です!全員避難してください」との指示が出て、セミナーは打ち切られてしまいました。ちょうど国連キャンペーンと連携した内容のアニメを上映する矢先だったのでとても残念でしたが、もちろん命が一番大事です。私も会場から避難しました。

知人の知人が撮影した当時の動画を後で見て、予想を上回る火の勢いに本当に驚きました。ニュースにもなったのでご覧になった方もいると思います。火事の原因は、電子レンジなどの電圧の違いによる発火のようです。とはいえ個人的には、気候変動関係者が数多く集まる場への地球からの警告のように感じてしまいました。こう言われている気がしたのです。
「この火事と同じくらい、地球も燃えているんだよ。非常事態なんだよ。人類よ、有事対応を!」と。

11月20日 パビリオンゾーンで起きた火災

この火災による会議の中断もあり、COP30は一日延伸し、最終的には、なんとか合意文書を出すことはできました。決裂こそ避けられたものの、残念ながらそれは妥協の産物で、今回の節目となるCOP30が大きな成果を得られたとは言い難いものになりました。

なんといっても脱化石燃料への工程表を作れなかったことが、物足らない結果です。COP30では、開催国ブラジルなど80か国以上が脱化石燃料への工程表の策定を求める声明を発表しましたが、サウジアラビア・ロシアなどの産油国、開発途上国の一部が反対し、見送られました。日本もこの声明には加わっていません。

そもそも今回のCOP30では、国連は2035年の温室効果ガス排出削減目標を9月末までに提出するように求めており、削減目標の野心的積み上げを目指していたのですが、提出期限を守った国は3割にとどまっていました。COP30開始後、6割は超えたもののいまだに全ての締約国からの提出には至っていないのが実情です。

この背景には、世界第2位の排出国であるアメリカがトランプ政権の誕生によりパリ協定から離脱を宣言、交渉にも参加しなかったという温暖化対策への逆風もあります。しかし実際には、アメリカは国としては参加しなかったものの「America is All Inn」という有志連合がCOPで存在感を示し、カリフォルニアのニューサム知事もベレン入りし、アマゾン熱帯雨林を訪問するなどリーダーシップを発揮していました。

もちろん前進もあります。COP30の成果としては、異常気象などによる被害を減らす適応分野では、途上国への資金支援を2035年までに少なくとも3倍に増やす努力を求めることで合意しました。しかし、前日に示された草案では2030年までとなっていたことから目標の期限が後ろ倒しになった形です。

世界の有識者の間では、化石燃料産業を抱える国も含む190を超える条約締結国の全会一致でしか物事を決められない現在のCOPの意思決定プロセスが時代に合わなくなってきているのではないかと、議論のプロセスの見直しを提言する人たちも出てきています。

来年は、トルコのアンタルヤが開催地に決まり、開催地の誘致を争っていたオーストラリアが交渉議長国を務めることになりました。温暖化の加速が深刻化する中で、果たして効果的な対策を打ち出せるのか、世界の厳しい目が注がれています。

1.5℃の約束 そしてアマゾンを守れるのか

今回、アマゾンの玄関口と言われるベレンで開かれたCOPだけに、熱帯雨林の保全の仕組みが作れるのかも大きな焦点でした。NHKエンタープライズでも、COP期間中にNHKワールドJAPANの番組「IMPACTS: Climates Change the World」 でCOP30シリーズを放送。中でも、このままではアマゾンの熱帯雨林がサバンナ化してしまう後戻りできないティッピングポイント(転換点・臨界点)が間近に迫っているという科学者の警告を伝えた特集番組「アマゾン“消失”の衝撃 COP30 熱帯雨林を守れるか」は日本語版を総合テレビでも放送し、大きな反響が寄せられました。アマゾンの危機の詳細については、ぜひワールドのVODやNHK ONEのNHKオンデマンドでご覧いただければと思います。

○NHK WORLD-JAPAN
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/shows/3025262/

○NHKオンデマンド
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025152395SA000/?spg=P202500481600000

内容をかいつまんでご紹介すると、現在、食料生産のための開発などで、すでに17%のアマゾンの熱帯雨林が失われていますが、このまま森林破壊が進んで20%を超え気温上昇が産業革命前から2℃を超えるような事態になれば、アマゾンの熱帯雨林の水循環が崩れてしまい、熱帯雨林そのものを維持できなくなる。「地球の肺」としてCO2を吸収してくれていたアマゾンがCO2を吐き出す側に回ることで温暖化がさらに加速し、人類生存に関わる大きな影響を及ぼすリスクが高まるというものです。しかも、こうしたアマゾンの枯死は2050年までに起きうる、という厳しい予測でした。

この番組でインタビューしたブラジルを代表する科学者のカルロス・ノブレさん(アマゾン科学パネル共同議長・サンパウロ大学教授)にも、COP30の会場で再会しました。

今回ノブレさんも大きな期待を寄せていたのが、ブラジルが提唱する国際熱帯雨林保護基金(TFFF)です。TFFFは今回のCOP30で正式に創設されたものの、資金集めには苦労をしています。ブラジルから大豆などの食料を輸入しアマゾンの森林破壊にも関与してきた日本ですが、どうやら資金拠出はしない模様です。ちょっとがっかりですね。他にも思うように資金拠出の輪が広がっておらず、前途多難な船出となりました。

本来、この枠組みが画期的と言われているのは、官民から拠出された資金の運用利益のうち、実際にアマゾンなどの熱帯雨林を守っている先住民族を含む地域コミュニティに20%配布するという新しい仕組みでした。今回、私も現地を視察し、アマゾンの熱帯雨林の豊かさを目の当たりにするとともに、森とともに生き、森の恵みで生活してきた先住民族の人々の暮らしも垣間見ました。彼らが幸せに暮らす権利を奪うことなく熱帯雨林を守っていくには、叡智と資金が必要です。そして、この生物多様性の宝庫と言われる森には、人間だけでなくさまざまな生きものたちがおりなす豊かな生態系があるのです。

ティッピングポイントが刻一刻と迫る中で、人為的気候変動を信じないトランプ政権の登場は打撃ではありますが、分断を理由に対策に手をこまねいている場合ではないのです。それこそが現地で改めて強く感じた率直な思いでした。

ベレンの至る所で、アマゾンの生態系の豊かさのシンボルとして表現されていたジャガー。帰国前、街角でこんな光景に出会いました。赤に白と青い星は、ベレンのあるパラ州の州旗です。

そういえば去年のCOP29では、「先進国の1.5℃を守ろうという野心が行方不明!」という猫のポスターがあったなあ・・・などと思い出しましたが、行方不明の猫は今年も行方不明のままのようでした。正直言って、このままではアマゾンのジャガーも滅んでいくしかない厳しい状況です。しかし、決して諦めることなく、メディアからも声を上げ続けるしかありません。

そして、最後にこの1枚。

COP30会場前に設置されたアート作品

貧しい途上国の痩せた青年が、太ったトランプを背負いながら沈んでいく・・・トランプに代表される先進国が責任を果たすことなく、負担を途上国や次の世代に押し付けることをやめない皮肉を辛辣に表現したアート作品です。

実は私たちも知らず知らずのうちに、背負われている側でのほほんと暮らし、もろともに沈んでいくのかもしれません。今年のこの異常なまでに暑かった夏が、将来「あの頃はまだ涼しかった・・・」なんて言われないように、一緒に本気で気候危機の課題に目を向け、行動を起こしていきましょう。
飛行機を乗り継ぎ、膨大な二酸化炭素を排出してブラジルに出向いたことの意味があるように、私もしっかり伝え続けたいと思います。

更新

堅達 京子の顔写真

堅達 京子

第1制作センター社会文化部

1988年、NHK入局。報道番組のディレクター・プロデューサーとしてNHKスペシャルやクローズアップ現代を制作。NHK環境キャンペーンの責任者を務め、気候変動やSDGsをテーマに多くのドキュメンタリーを制作。2021年、NHKエンタープライズに転籍。Nスペ「2030 未来への分岐点」や「1.5℃の約束」を制作。ことしは、アニメ「FUTURE KID TAKARA」に初挑戦! 日本環境ジャーナリストの会副会長。環境省中央環境審議会、文科省環境エネルギー科学技術委員会、東京都再エネ実装専門家ボード等の委員を務める。東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員。主な著書に「脱プラスチックへの挑戦」「脱炭素革命への挑戦」(山と溪谷社)

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